今回解決する悩み
「ベクトルのなす角ってなに?」
「角度をどうやって求めるの?」
今回は数学Bのベクトルから「ベクトルのなす角」に関するこんな悩みを解決します。
ベクトルを習い始めたばかりで…
2つのベクトルがあるとき、2ベクトルの間には角が生まれます。この角のことを“なす角”と呼びます。
ベクトルのなす角
ベクトルのなす角とは、2つのベクトルの始点同士を重ねた場合に作られる\(180^\circ\)以下の角度のこと。
なす角は180度を超えないのもポイントです。
本記事では「ベクトルのなす角」を練習問題も交えながら解説していきます。
平面ベクトルの場合と、空間ベクトルの場合どちらもしっかりマスターしていきましょう!
※本ページは学習アプリのプロモーションが含まれています。
ベクトルが苦手な方は
ぜひ最後までご覧ください。
それではベクトルのなす角について解説していきましょう。
ベクトルのなす角とはどこ?
そもそも、ベクトルのなす角とはどの角のことでしょうか?
実は、ベクトルのなす角については以下のように考えるルールがあります。
2つのベクトルの始点同士を重ねた場合に作られる\(180^\circ\)以下の角度のこと。
必ず180度より小さい方の角を“なす角”とします。
また、2つのベクトルの「始点」についても考え方があります。
始点とは、\(\vec{AB}\)だったら点A、\(\vec{BA}\)だったら点Bのように、ベクトルの左側の文字で表される点のことを指します。
先ほど述べたように、ベクルのなす角は2つのベクトルの始点同士を重ねて求めるものでした。
ですので、下図のように始点が重なっていない場合は、平行移動して始点同士を重ねる必要があります。
上の図を見てください。
この場合、\(\vec{AB}\)と\(\vec{BC}\)のなす角は何度になるでしょうか?
パッと見ただけだと「\(40^\circ\)」と答えそうになりますが、\(\vec{AB}\)と\(\vec{BC}\)は、始点同士が重なっていないため、このままでは求めることができません。
ベクトルを平行移動して、始点同士を重ねてみましょう。
\(\vec{AB}\)を平行移動し、始点同士を重ねると上のような図になることが分かりました。
よって、\(\vec{AB}\)と\(\vec{BC}\)のなす角は、\(\vec{BA’}\)と\(\vec{BC}\)のなす角になることが分かりました。
ですので、答えは\(180^\circ – 40^\circ=140^\circ\)となります。
ベクトルのなす角を求める
では、ベクトルのなす角について分かったところで、ベクトルのなす角の大きさを求めてみましょう。
平面ベクトルの場合
例題①
2つのベクトル\(\vec{AB}\),\(\vec{BC}\)のなす角を求めてみましょう。
この場合は、2つのベクトルの始点が重なっていないため、\(\vec{AB}\)を平行移動して2つのベクトルの始点を重ねます。
上の図より、\(\vec{AB}\),\(\vec{BC}\)のなす角は、\(\vec{BC}\)と\(\vec{BA’}\)となることが分かりました。
よって、答えは\(180^\circ-100^\circ=80^\circ\)
例題②
2つのベクトル\(\vec{a},\vec{b}\)のなす角を求めてみましょう。
\(|\vec{a}|=\sqrt3,|\vec{b}|=2,\vec{a} \cdot \vec{b}=2\)
この場合はベクトル\(\vec{a},\vec{b}\)の始点は重なっているため、平行移動は必要ありません。
問題で与えられた情報を使って、\(\vec{a},\vec{b}\)のなす角\(\theta\)を求めます。
問題では、2つのベクトルの大きさと内積が与えられていますね。
ここで内積の定義について復習してみましょう。
\(\vec{a},\vec{b}\)のなす角を\(\theta\)とすると、
\[\vec{a} \cdot \vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos{\theta}\]
ここに、問題で与えられた数値を当てはめると
\begin{eqnarray}
2&=&\sqrt3 \cdot 2 \cdot \cos{\theta}\\
\cos{\theta}&=&\frac{1}{\sqrt3}
\end{eqnarray}
よって、\(\vec{a},\vec{b}\)のなす角は\(\theta=60^\circ\)となる。
空間ベクトルの場合
空間ベクトルの場合も、考え方は平面ベクトルの時と同様です。
ただ、空間ベクトルのなす角を求める問題は、内積を使って求める問題が多いですので、そちらを例題として解いてみましょう。
例題③
\(\vec{a}=(1,2,-3), \vec{b}=(2,-3,1)\)であるとき、\(\vec{a},\vec{b}\)のなす角\(\theta\)を求めてみましょう。
ここでは、\(\vec{a},\vec{b}\)の成分表示が与えられています。
内積を使いながら、\(\vec{a},\vec{b}\)のなす角\(\theta\)を求められそうです。
問題で与えられている数字から、分かるものを計算してみましょう。
\begin{eqnarray}
|\vec{a}|&=&\sqrt{1^2+2^2+{(-3)}^2}=\sqrt{14}\\
|\vec{b}|&=&\sqrt{2^2+{(-3)}^2+1^2}=\sqrt{14}\\
\vec{a} \cdot \vec{b}&=&1\times2+2 \times (-3) \times (-3) \times 1=-7
\end{eqnarray}
\(\vec{a} \cdot \vec{b}&=&|\vec{a}||\vec{b}|\cos{\theta}\)より
\begin{eqnarray}
-7&=&\sqrt{14}\times\sqrt{14}\times\cos{\theta}\\
\cos{\theta}&=&-\frac{1}{2}
\end{eqnarray}
よって、\(\theta=120°\)
角度を求めよう《練習問題》
なす角の求め方も分かったところで、いくつか練習問題に挑戦しましょう!
練習問題①
\(\vec{a}=(-2,1),\vec{b}=(6,-3)\)であるとき、\(\vec{a},\vec{b}\)のなす角\(\theta\)を求めてみましょう。
練習問題②
\(\vec{a}=(1,2),\vec{b}=(t,1)\)のとき、\(\vec{a},\vec{b}\)が垂直となるような定数\(t\)を求めましょう。
垂直の場合は、\(\cos\theta=0\)になるため、\(|\vec{a}|,|\vec{b}|\)は計算する必要がありませんでしたね。
次の章では、垂直条件を使った問題も紹介します。
なす角の求め方がだいぶ分かってきました!
素晴らしいね!覚えているうちに、たくさん練習しよう!
ベクトルの内積公式の応用
以前も少し解説しましたが、ここからは、内積の垂直条件と平行条件に付いて解説します。
今回解説した2つのベクトルのなす角とも関連性があるので、復習しておきましょう。
内積の垂直条件
0ではない2つのベクトル\(\vec{a}、\vec{b}\)があります。
この2ベクトルが垂直に交わるとき、
\[\vec{a}\bot\vec{b} \Leftrightarrow \vec{a} \cdot \vec{b}=0 \Leftrightarrow x_{1}x_{2}+y_{1}y_{2}\]
実際、垂直条件を使った例題を紹介します。
例題
0ではない2つのベクトル\(\vec{a},\vec{b}\)があり、\(2|\vec{a}|=|\vec{b}|\)である。
\(3\vec{a}+\vec{b}\)と\(\vec{a}-2\vec{b}\)が垂直となる時、\(\vec{a},\vec{b}\)のなす角\(\theta\)を求めてみましょう。
2つのベクトルが垂直である条件を使うと、
\((3\vec{a}+\vec{b}) \bot (\vec{a}-2\vec{b})\) より、
\[(3\vec{a}+\vec{b}) \cdot (\vec{a}-2\vec{b})=0\]
ゆえに
\begin{eqnarray}
(3\vec{a}+\vec{b}) \cdot (\vec{a}-2\vec{b})&=&3|\vec{a}|^{2}-5\vec{a} \cdots \vec{b}-2|\vec{b}|^{2}\\
&=&0
\end{eqnarray}
\(2|\vec{a}|=|\vec{b}|\)なので
\begin{eqnarray}
3|\vec{a}|^{2}-5\vec{a} \cdot \vec{b}-8|\vec{a}|^{2}&=&0\\
5\vec{a} \cdot \vec{b}&=&-5|\vec{a}|^{2}\\
\vec{a} \cdot \vec{b}&=&-|\vec{a}|^{2}
\end{eqnarray}
\(\vec{a} \cdot \vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos{\theta}\)であるから、
\begin{eqnarray}
\displaystyle \cos{\theta}&=&\frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}||\vec{b}|}\\
\displaystyle &=&-\frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}| \cdot 2|\vec{a}|}\\
\displaystyle &=&-\frac{1}{2}\\
\theta&=&120°
\end{eqnarray}
内積の平行条件
0ではない2つのベクトル\(\vec{a}=(x_{1},y_{1}),\vec{b}=(x_{2},y_{2}\)があるとき
\[\vec{a}//\vec{b} \Leftrightarrow \vec{b}=k\vec{a}\]
\[\vec{a}//\vec{b} \Leftrightarrow x_{1}y_{2}-x_{2}y_{1}=0\]
となる実数kがある。
実際、平行条件を使った例題を紹介します。
例題
0ではない2つのベクトル\(\vec{a},\vec{b}\)がある。
\(\vec{a}=(1,2t),\vec{b}=(t,t^{2}+1)\)が平行となる時、\(t\)を求めましょう。
まず、\(\vec{a},\vec{b}\)は平行であるから、
\begin{eqnarray}
1(t^{2}+1)-2t^{2}&=&0\\
t^{2}&=&1\\
t&=&±1
\end{eqnarray}
[1] \(t=1\)のとき
\(\vec{a}=(1,2),\vec{b}=(1,2)\)である。
このとき\(\cos \theta=1\)より、\(\theta=0°\)
[2] \(t=-1\)のとき
\(\vec{a}=(1,-2),\vec{b}=(-1,2)\)である。
このとき\(\cos\theta=-1\)より、\(\theta=180°\)
したがって、いずれにせよ\(\vec{a},\vec{b}\)が平行であることが分かります。
ベクトルのなす角 まとめ
今回はベクトルのなす角について学習しました。
平面ベクトルの・空間ベクトル両方で角度について考えましたが、まず平面ベクトルから理解を進めると分かりやすいです!
ベクトルのなす角
ベクトルのなす角
ベクトルのなす角とは、2つのベクトルの始点同士を重ねた場合に作られる\(180^\circ\)以下の角度のこと。
下図のように2ベクトルの始点が重なっていない場合は、一方のベクトルを平行移動して始点を重ねる必要がある。
ベクトルのなす角を求めるには、「ベクトルの内積」についてもしっかりと理解しておく必要があります。
ベクトルの内積はこちらの記事で詳しく解説しています。
それでは最後までご覧いただきありがとうございました。
みんなの努力が報われますように!
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